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「いつも、一歩を踏み出す勇気がなく、後で『やればよかった』と後悔してしまいます・・・・」

「失敗してしまうのでないか」という迷いで、行動を躊躇(ちゅうちょ)してしまうこと、ありますよね。私も、アドラー大学院留学前に、初めてワークショップの話をいただいた時、自信がなかったので「もう少し待ってください」と返答し、その場をしのいだことがありました。帰宅後、「引き受ければよかったかな」と多少後悔しました。

  再び、お話をいただい際にも、まだ自信がなく「一応、やってはみますが・・・」と、前置きしてから引き受けました。幸いにも、そのワークショップはオファーいただいた方のご協力もあり、無事開催することができ、「引き受けてよかった」と素直に思いました。

 

アドラー心理学を学んだ今からすると、この「一応は、やってはみますが・・・」という言葉の裏には、「うまくいくかは確証できないので、あまり期待しないでください」という意味が隠されていることがわかりました。これは、引き受けたように見せながら、「私に声をかけたのはあなただから、あなたも失敗した時のことを想定しておいてください」と、機会を与えてくれた相手に責任転嫁するとても失礼な言葉とも言えます。

 

このような態度のことを、アドラー心理学では“躊躇(ちゅうちょ)する態度”と呼んでいます。約80年前、アドラーは「安全に、また確実に成功する確信がなければ、積極的に行動を起こさないほうを選ぶ人」の存在に気づいていました。人生で直面する課題が大きければ大きいほど、それから距離をとり、真正面からとりくむことを避けようする態度です。

 

 前回のコラムで触れた『不完全である勇気』を持って長所に注目し、「軽はずみではなく、よく考えて行動するところが自分のいいところだ」ととらえ、チャンスを与えてくれた方に感謝しながら一歩を踏み出してみてはどうでしょうか。一歩踏み出すことは、今とは違う未来に行くこと(変化)です。つまり自己成長につながっていくということになります。

 

アドラーは次のようにいっています。

「社会生活において、明確で具体的な成功を妨げるものは、いったい何なのか。もし、そのように私たちが自問したならば、それは現状を維持すること、変化しないことだというだろう。これこそが“躊躇する態度”である」